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マーケティングサイクル

定義

マーケティングサイクル は Marketing OS の canonical マーケティング OS である。AI エージェントと協働しながら学習し続ける、マーケ組織のためのオペレーティング・システムであり、個別フレームワーク(AARRR・STP・RAM-CE 等)の上位に位置して、それらを組織学習として機能させるための型を定義する。

5 段階のサイクル ── 観測・データ収集 → 理解・分析する → 再構築起動・実装する学ぶ

観測・データ収集 ─→ 理解・分析する ─→ 再構築 ─→ 起動・実装する ─→ 学ぶ ─┐
   ↑                                                    │
   └────────────────────────────────────────────────────┘
              (学ぶの終端は次サイクルの観測・データ収集の起点)
動詞 性格 役割
観測・データ収集 観測・データ収集 入力 4 つの観測対象(Team / Customer / Market / Performance)から認識・実態を取り込む
理解・分析する 理解・分析する 出力 視点を切り替えて選択肢と判断材料を出す。JTBD・ICP 差分・Positioning 機会を言語化する
再構築 再構築する 認知の再構築 既成 KPI・聖域・「ねばならない」を機械的に列挙し、前提を組み替える余白を作る
起動・実装する 起動・実装する 実行・本番反映 セグメント × チャネル × コンテンツに実装し、計測同時着地で本番反映する
学ぶ 学ぶ 還流 結果を ICP / Positioning / Playbook に書き戻し、次サイクルの観測・データ収集の入力に変える

なぜ マーケティングサイクル か

マーケ OS の独自性は「顧客との同期」を構造に埋めること

汎用の組織学習ループ(OODA / PDCA / Double-Loop Learning)は、内部の意思決定サイクルを駆動するためのものである。マーケティングがこれらと違うのは、意思決定の前提として「顧客との継続的な同期」を構造に埋めなければ機能しないことだ。マーケティングサイクルが 観測・データ収集 を 4 つの源(中でも Customer Sync を独立源)として明示しているのは、これを OS レベルで強制するためである(詳細は 観測・データ収集 節)。

再構築を骨格名に昇格させる

マーケ組織の最大のボトルネックは、引き継いだ KPI・看板施策・「ねばならない」が思考を縛ること。マーケティングサイクルが 再構築(既成枠の組み替え)を骨格名に昇格させているのは、再構築を独立段として死守することで、閉じた最適化(既存 "Adaptive Marketing" / Real-time Marketing 系統の戦術最適化高速化)と差別化するためである。再構築は OODA / PDCA との差別化軸でもある。

マーケティングとは何か — 最適化としての定義

マーケティングサイクルが前提とするマーケティングの定義(marketing-structural-issues.md 冒頭):

マーケティングとは、最適化である。

勝者になることでも数字を増やすことでもなく、自社の能力・リソース・現在地に合わせて適した戦略・目標・ポジショニング・チャネル・KPI を選び、整合させ続ける営為

ただし「最適化」は二種類に分かれる。マーケティングサイクルが目指すのは 開かれた最適化 である:

  • 閉じた最適化 — 自部署で観測できる特定指標(CPA / CVR / CTR / PV 等)だけをループに入れる戦術最適化。Adaptive Marketing 系統。前提(KPI・ICP・施策ラインナップ)は固定で、運用パラメータだけが動く。機能不全のマーケ組織はほぼ例外なくここに退避している
  • 開かれた最適化 — 顧客・市場・現場・経営・実績の全階層の声を入力にし、前提自体(KPI・ICP・施策・聖域)を最適化対象に含める。観測・データ収集の 4 つの観測対象 + 再構築で前提を組み替える + 学ぶ段で結果を前提に書き戻す、というマーケティングサイクルの構造そのもの

マーケティングサイクルの 5 段階は、この開かれた最適化を組織として継続できる形に動詞化したもの。起動・実装する(適合させて本番反映する)は最適化の動詞化、観測・データ収集 は入力の開放、再構築は前提の再構築学ぶ は前提への書き戻し ── どれが欠けても閉じる方向に退避する。詳細な対比(閉じた最適化 vs 開かれた最適化)は marketing-structural-issues.md の「閉じた最適化 vs 開かれた最適化」節を参照。

観測・データ収集段のカバレッジチェック

観測・データ収集段で「自社のマーケがどの領域をカバーできていて、どこが空白か」を点検するためのカバレッジモデルは、CMO Marketing OS Playbook の 12 知識エリア(knowledge/marketing/playbook/)を参照する。空白 KA は次サイクルの観測・データ収集の入力 / 再構築候補になる。

5 段階の詳細

観測・データ収集

原則: マーケはチームの頭の中だけでは動かない。4 つの独立した観測対象を継続的に取り込み続けることが、すべての判断の起点になる。サイロの中で持っている情報は、組織にとって存在しないのと同じ。

観測・データ収集の 4 つの観測対象

観測対象 内容 主なソース 書き込み先(例)
1. Team Sync(内部認識) メンバー間の言葉・前提・存在意義・優先順位 サーベイ・対話・各メンバーの独立記述 memory/organization/ memory/workspaces/active/profile/
2. Customer Sync(顧客同期) 顧客の生の声・行動・反応・JTBD・離脱理由・刺さった言葉 営業ログ / サポート問い合わせ / レビュー / SNS 言及 / サイト行動 / 購買履歴 / 解約理由 / インタビュー memory/workspaces/active/profile/customer-signal.md(推奨)/ customer-research-jtbd.md を参照
3. Market Sync(市場・競合同期) 競合の動き / プラットフォーム仕様 / 業界トレンド 外部揮発情報、競合 SERP、広告ライブラリ knowledge/marketing/tool/(プラットフォーム仕様)/ knowledge/marketing/case/(事例)
4. Performance Sync(自社実績同期) 過去の成功 / 失敗 / 現状数値 / ベースライン GA4 / 広告管理画面 / 売上 / 解約レポート memory/workspaces/active/results/

なぜ Customer Sync を独立源として置くか

顧客情報を「ICP」(内部仮説)と「Performance Data」(メトリクス)だけに吸収すると、構造的に ICP 仮説 ≠ 実際の顧客」のズレを検出できない。マーケティングサイクルは Customer Sync を独立源として置くことで:

  • 仮説(ICP)と実態(Customer Sync)のズレが自動的に 再構築段の入力になる
  • 顧客の生の言葉が KPI ノイズに埋もれずに残る
  • **「自社の最適は誰の最適か」**が常に問い直される構造が組み込まれる

これがマーケ OS と汎用組織学習ループ(OODA / PDCA)を分かつ最大の構造的違いである。

やること

  • 言葉の定義を揃える: 「マーケティング」「成果」「顧客」「施策」がチーム内で同じ意味を指しているかを確認する
  • 個人の存在意義を言語化する: 各メンバーが「自分は事業のどの課題に効いているのか」を自分の言葉で言える状態にする
  • 同期的戦略の駆動: 各メンバーが独立に書き出した認識(自社認識 / 市場認識 / 目標 / 優先順位)を同期して合成する。一致箇所を確からしい前提に、不一致箇所を 再構築の入力にする(詳細は marketing-structural-issues.md Section 0.7)
  • 顧客接点の構造的吸い上げ: 営業・サポート・解約・レビュー・問い合わせ・サイト行動を、個人の頭の中ではなく customer-signal.md 等に書き戻す
  • 市場・競合・プラットフォームの揮発情報/listen market 経由で取り込む
  • 過去の成功・失敗、現在のパフォーマンスmemory/results/ に記録する

観測・データ収集が成立しているかのチェック

  • チーム内で「マーケティング」が指す範囲が一致しているか
  • 各メンバーが自分の役割を職能ではなく事業課題への寄与で語れるか
  • Customer Sync が独立した記録として残っているか(performance metrics に埋もれていないか)
  • 直近の顧客接点ログ(営業・サポート・レビュー)が memory に書き戻されているか
  • [TODO] が残っていないか
  • 「弊社は」ではなく具体的な固有名詞・数値で書かれているか
  • 担当者の頭の中だけにある情報がないか(属人化検出)

担い手スキル

/listen team-org(Team Sync)/ /listen team-brand(Team Sync)/ /listen team-workspace(Team Sync)/ /listen customerCustomer Sync)/ /listen market(Market Sync)/ /workspace

Customer Sync/listen customerprofile/customer-signal.md に顧客の生の声・行動ログを独立に保持するICP 仮説は icp.md、顧客実態は customer-signal.md に分ける(customer-research-jtbd.md プレイブック参照)。

理解・分析する

原則: データそのものは理解・分析ではない。「何を理解しているか/していないか」どの視点で何を理解・分析するか」を意識的に切り替えなければ、観測・データ収集で集めたシグナルは雑音のまま終わる。漠然とした問いには漠然とした答えしか返らない。

やること

  • 視点を切り替えて選択肢と判断材料を出す(ceo / consultant / gemba / customer)
  • JTBD(Job To Be Done)・潜在需要・購買決定要因を顧客の言葉で理解・分析する
  • 自社の Positioning と市場期待のギャップを言語化する
  • 既存施策の効率と感応度(marketing-structural-issues.md Section 2.2)を診断する
  • 何を理解しているか/していないかを実測する(サーベイ・診断・既存成果物のレビュー)

良い理解・分析の構造

  1. 誰の視点で(ceo / consultant / gemba / customer)
  2. 何を(評価 / 制作 / 分析 / 比較 / 予測)
  3. どの深さで(案出し 3 つ / 完成品 / レビュー付き / A/B パターン)
  4. 何を判断基準に(ICE / ROI / ブランド整合 / CVR 予測)
  5. どの形式で(表 / チェックリスト / コード / 原稿)

理解・分析のサブタイプ

サブタイプ 何をするか 主な skill / playbook
Design ゼロから設計(戦略 / ICP 仮説 / LP 構成案 / キーワード戦略) seo-playbook.md customer-research-jtbd.md とインライン対話
Review 既存成果物を評価(コピー / LP CVR / 広告整合 / 経営インパクト) /insight ceo /insight customer /brand
Analytics データから理解を更新する web-analytics-practice.md measurement-incrementality.md

サイクル内での回り方

Design 理解・分析 → 起動・実装する(叩き台の反映) → Review 理解・分析 → 起動・実装する(本番反映) のように、理解・分析と起動・実装するが入れ子で回る。

担い手スキル

/insight <ceo|consultant|gemba|customer>/brand(判断チェック)。専門領域の Design / Analytics は knowledge/base/ のプレイブックを参照しながらインライン対話で進める。

再構築

原則: マーケ組織の最大のボトルネックは、既成の KPI・聖域・「ねばならない」が思考を縛ること。これらを意識的に再構築しない限り、前提の組み替えは起きない。

再構築は本番反映ではない。本番反映は起動・実装するの責務。再構築認知・前提・組織心理の組み替えである。

やること

  • 「ねばならない」を一旦再構築の対象にする(KPI・スケジュール・既存の戦略)
  • 引き継いだ KPI を機械的に列挙し、P0–P3 の整合性で篩にかける(marketing-structural-issues.md Section 2.1)
  • 走っている施策を列挙し、感応度 High / Mid / Low で篩にかける(同 Section 2.2)。Low は撤退候補
  • 聖域(過去の意思決定 / 看板施策 / 既存 ICP 像 / 慣習チャネル)を否定して並べる
  • 観測・データ収集段の Customer Sync が示す実態と既存 ICP 仮説のズレを並べ、仮説の方を再構築候補にする
  • 観測・データ収集段で出た「不一致箇所」を再構築候補として読み直す
  • 個人が抱えている負荷を表に出して解放する
  • ゼロベースで「もし制約がなかったら何をするか」を問い直す

再構築が成立しているかのチェック

  • 「現状の KPI に縛られない場合、別の指標になりうるか」が議論されたか
  • 「聖域として触れていなかった前提」が機械的に列挙されたか
  • P3 × Low(経営に紐付かず施策にも反応しない指標)がゼロになっているか
  • 既存 ICP 仮説 vs Customer Sync 実態のズレ再構築候補に含まれたか
  • 「ねばならない」と「やりたい」が区別されているか
  • チームメンバーが個別に抱えている負担・不満が場に出ているか
  • 捨てた後に「最後まで残る一本」が言語化されているか(marketing-structural-issues.md Section 0.4)

重要な制約

再構築は人間にしか引き受けられない判断である。AI は「聖域」「前提」「ねばならない」を機械的に列挙できるが、実際に再構築の決断は人間に残る。組織政治を超えて「これは違う」と言うのは AI の役割ではない。

担い手スキル

/release(前提・KPI・聖域の機械的列挙→再構築議論の触媒)/ /insight consultant(外部コンサル視点でのゼロベース率直レビュー)

起動・実装する

原則: 自社プロダクトの実力に適合しない目標は、いくら立派でも機能しない。自分たちのプロダクトに何ができるかを正確に理解した上で、適した目標とステップに再構成し、本番環境で動く形に落として、計測可能な状態で稼働させる。

マーケティングの定義そのもの: マーケティングとは最適化である ── 自社の能力・リソース・現在地に合わせて適した戦略・目標・ポジショニングを選び続けること。起動・実装するはこの定義を段階として動詞化したものである。正解は一つではない

やること

  1. 適合: 自社の実力・リソース・制約に適合した目標とステップを再構成する
  2. セグメント × チャネル × コンテンツの実装: 誰に / どこで / 何を / どう届けるかを具体化
  3. 本番反映: 原稿公開、広告入稿、LP デプロイ、価格変更、解約フロー改修 ── 本番環境に反映されて初めて 起動・実装する 完了
  4. 計測の同時着地: UTM / 計測タグ / コンバージョン設定 / A/B テスト分岐を同じリリースで揃える
  5. ベースライン記録: 本番反映時点の事前数値を memory/workspaces/active/results/ に記録

起動・実装するの責務

  • 選ぶ: 複数案の中から自社の文脈に最も合うものを選択する
  • 削る: AI が出しがちな冗長な要素・汎用的な装飾を削る
  • 足す: AI が持ちえない現場の暗黙知・1 次情報を足す
  • 本番反映する: 本番環境に反映する
  • 計測する: ベースラインと差分が測れる状態を作る

担い手

専門領域の実行 skill は持たず、knowledge/base/ プレイブックを参照しながらインライン対話で進める:

領域 参照する knowledge/base/
広告運用 digital-advertising.md
コンテンツ制作 content-marketing.md narrative-storytelling.md
CVR 最適化(page / signup-flow / onboarding / form / popup / paywall) cvr-optimization-playbook.md
価格設計 pricing-strategy.md
解約防止・リテンション retention-lifecycle.md
顧客調査 customer-research-jtbd.md
見積り・工数計算 estimate-playbook.md
ブランド戦略 brand-strategy.md
UI / LP レビュー cvr-optimization-playbook.md の page セクション
データ分析・計測 web-analytics-practice.md measurement-incrementality.md

ブランド適合の判断には /brand を使う。本番反映の可否そのものは、以下の本番反映前チェックで確認する。

本番反映前チェック

起動・実装するは skill を持たないが、本番反映の前に以下 7 項目を満たす。これは PMBOK 風の重い承認プロセスではなく、本番反映・計測・責任の所在を同時に成立させるための軽量な確認手順である。対応する成果物は agent-catalog.md の成果物カタログに定義する。

項目 確認すること 対応する成果物
オーナー 結果に責任を負う個人が 1 名決まっているか。チーム名だけで済ませていないか activation-brief.md
範囲 何を出すか / 出さないか、対象セグメント、対象チャネル、対象期間が明確か activation-brief.md
予算 媒体費・制作費・工数・外注費の上限が決まっているか。超過時の判断者がいるか activation-brief.md
リスク ブランド、法務、顧客体験、計測、オペレーション上のリスクを列挙したか activation-brief.md / approval-log.md
計測 事前数値、判定指標、観測期間、計測方法、成功 / 撤退条件が決まっているか measurement-plan.md
承認 ブランド・法務・予算・実装の承認が必要な場合、誰がいつ承認したか残っているか approval-log.md
ロールバック 何が起きたら止めるか、止める権限者、元に戻す方法が決まっているか measurement-plan.md

起動・実装する段の実行管理成果物(PMBOK 由来の軽量補助線)

本番反映前チェックは本番反映可否の最低条件であり、複数人・複数日・外部依存・承認・高リスクを含む施策では、それだけでは実行管理が薄くなる。そこで PMBOK のガバナンス、スコープ、スケジュール、財務、ステークホルダー、リソース、リスクの観点を、起動・実装する段にだけ軽量な成果物として取り込む。

成果物 PMBOK 的な補完観点 何を管理するか 使う条件
delivery-plan.md スケジュール / 統合管理 マイルストーン、依存関係、ブロッカー、本番反映日 複数日・複数人・外部依存がある
stakeholder-map.md ステークホルダー / ガバナンス 承認者、相談先、通知先、反対・懸念の所在 承認・部門調整・顧客影響がある
risk-register.md リスク リスク、トリガ、軽減策、発生済みの問題、エスカレーション 高インパクトリスクがある
change-log.md スコープ / 変更管理 スコープ、予算、KPI、スケジュール、ロールバック変更の理由と承認者 起動・実装する中に重要変更が発生した
resource-plan.md リソース / 財務 / 調達 社内工数、外注、ツール、AI 委譲範囲、実行余力リスク 工数・外注・AI 委譲が成果に影響する

これらは マーケティングサイクルの中核条件ではない。簡易運用では必要なものだけ、標準運用 / 厳格運用では本番反映前に要否を判断する。重要なのは「PMBOK を全面導入する」ことではなく、マーケティングサイクルが弱くなりやすい実行管理を 起動・実装する段に限定して支えること。

進行不可条件

以下のいずれかに該当する場合、Marketing OS 上では 起動・実装する 未成立と扱う。例外的に本番反映する場合も、例外理由を activation-brief.md に残す。

  • オーナー不在: 結果に責任を負う個人がいない
  • 範囲不明: 対象セグメント・チャネル・期間・対象外範囲が曖昧
  • 計測不在: 事前数値、判定期間、撤退条件がない
  • リスク未確認: ブランド毀損・法務・顧客体験・計測破綻のいずれかを見ていない
  • 承認不在: 承認が必要な施策なのに承認ログがない
  • ロールバック不在: 広告停止、LP 差し戻し、価格戻し、配信停止などの手順がない

本番反映前チェックを通っていない本番反映は、実行作業としては完了していても 学ぶ段で比較・責任・再現ができない。したがって「やった」ではなく「組織学習に接続されていない実行」として扱う。

起動・実装するの同時着地条件

「本番反映して完了」の定義に以下を加える:

  • 計測実装: UTM / 計測タグ / コンバージョン設定 / A/B テスト分岐
  • ベースライン記録: 本番反映時点の事前数値を results/ に記録
  • チェック痕跡: 法務・ブランド・予算などの承認ログ(該当する場合のみ)

計測されていない本番反映は 学ぶ段で比較対象を失う。

学ぶ(学ぶ)

原則: 本番反映した結果は、書き戻されて初めて次サイクルの前提になる。書き戻されない学びは個人の頭の中にだけ残り、組織知にならない。学ぶ は単なる「振り返り」ではなく、次サイクルの観測・データ収集の入力を能動的に作る段階である。

やること

  1. 結果の収集: 本番反映後の数字(CVR / CPA / ROAS / 順位 / 売上)と定性(顧客反応 / 営業の声 / サポート問い合わせ)を集める
  2. 4 軸で整理:
    • Funnel Conversion: ファネル段階ごとの転換率変化
    • Segment Response: セグメント別の反応差
    • Attribution: チャネル・接点の寄与
    • Unit Economics Update: LTV / CAC / Payback の更新
  3. 書き戻し: 検証済みの知見だけを以下に書き戻す
    • memory/workspaces/active/results/ — 実績数値・施策検証ログ
    • memory/workspaces/active/profile/ICP / Positioning の更新(仮説ではなく検証済みの事実のみ)
    • memory/workspaces/active/profile/customer-signal.md — 顧客の新しい声・行動パターン
    • knowledge/marketing/tool/ — ツール・プラットフォーム別の揮発情報(仕様変更・運用 Tips)
    • knowledge/marketing/case/ — 検証済み事例として一般化できる学び
  4. AI 出力の採否ログ: AI が出した提案のうち何を採用し何を捨てたか、なぜかを /learn の差分セクションに残す(responsibility-design.md
  5. 次サイクルへの引き継ぎ: 残課題と新仮説を 観測・データ収集段の入力として明示する

Evidence Level(知見の格上げ基準)

学ぶ段で扱う情報は、検証度に応じて E0〜E3 に分類する。これは「思いつき」を profile 層に混入させないための基準であり、/learn の検証チェックより上位の共通語彙である。

Level 定義 置き場所 profile 反映
E0: Hypothesis 未検証の仮説・解釈・アイデア output/ / results/ の Archive 不可 「この訴求は刺さるはず」
E1: Observation 単発の観測。顧客の声、1 施策の結果、少数サンプル customer-signal.md / results/ 不可 インタビュー 1 件、広告 1 本の反応
E2: Repeated Signal 複数接点・複数施策・十分な期間で同じ傾向が再現 results/ + profile 反映候補 承認後に可 複数商談で同じ反論、2 週間以上の広告傾向
E3: Validated Learning 数値・定性・顧客行動が揃い、反証条件も確認した検証済み知見 profile/ / 必要に応じて knowledge/marketing/tool/ knowledge/marketing/case/ ICP の更新、Positioning の修正、真の ROAS 係数

Evidence Write Rules

  • E0 / E1 は profile に書かない: 次サイクルの前提を汚染するため。results/customer-signal.md に観測として残す
  • E2 は profile 反映候補: /learn で差分を提示し、ユーザー承認後に profile/ へ反映する
  • E3 は検証済み知見: profile/ に反映できる。外部環境・プラットフォーム仕様など workspace 固有でないものは knowledge/marketing/tool/(ツール仕様)/ knowledge/marketing/case/(事例)に残す
  • knowledge/base/ へは直接昇格しない: 複数 workspace で再現し、汎用プレイブックとして抽象化できる場合のみ、別途レビューして反映する
  • Evidence Level は下げられる: 後続サイクルで反証が出た場合、E3 を E2 / E1 に戻し、profile の記述も修正候補にする

学ぶが成立しているかのチェック

  • 結果の数字と定性が両方残っているか
  • 「うまくいった理由 / うまくいかなかった理由」が仮説ではなく検証済みの言葉で書かれているか
  • Customer Sync 側に新しい知見が書き戻されているか(数値メトリクスだけで終わっていないか)
  • 次サイクルの観測・データ収集に渡す引き継ぎ事項が明文化されているか
  • AI 出力の採否ログが残っているか

担い手スキル

/learn(次サイクルへの還流チェック)/ /listen market(外部揮発情報の更新)

マーケティングサイクルのスキル対応表

観測・データ収集 理解・分析する 再構築 起動・実装する(本番反映) 学ぶ(還流) Meta / Ops
/listen team-org /insight ceo /release knowledge/base/ プレイブック参照のインライン実行 /learn /next
/listen team-brand /insight consultant /next --verbose
/listen team-workspace /insight gemba /workspace
/listen customer /insight customer
/listen market /brand

設計思想: 専門領域の実行(広告運用・コンテンツ・CVR 最適化・価格・解約・調査・分析・UI レビュー・見積り)は skill 化せず knowledge/base/ のプレイブックでカバーする。skill は「サイクルを駆動する」「workspace 知識を前提に判断する」役割に絞る(詳細: agent-catalog.md)。

/next/next --verbose は Meta(サイクル全体の進行確認)として運用する。

アンチパターン

  • 観測・データ収集丸投げ: 「とにかくいい感じで」── AI は平均的な回答しか返せない
  • Customer Sync の不在: ICP 仮説と Performance Data だけで 観測・データ収集を済ませ、顧客の生の声を構造的に取り込まない ── 「ICP ≠ 実態」を検出できなくなる
  • 理解・分析するの過剰: 1 つのプロンプトで 10 個聞く ── どれも中途半端になる。1 サイクル 1 目的
  • 理解・分析する 量産: 観測・データ収集段の不一致を 再構築に渡さず、理解・分析する段で AI に「正解の戦略」を量産させる ──「より洗練された無意味さ」を再生産する(marketing-structural-issues.md Section 0.5)
  • 再構築不在: 「現状の KPI を疑う」プロセスを飛ばして 起動・実装する段に進む ── 既成の失敗パターンを再生産する
  • 再構築の儀式化: 「とりあえず再構築した」と言うだけで、引き継ぎ KPI も看板施策も実際は残る ── 再構築したのは言葉だけ
  • 「強み信仰」での施策増殖: 再構築で篩にかけずに 起動・実装する段で施策を増やし続ける ──「何かやらなきゃ」と「上手く行かなそう」の挟撃に対する防衛反応そのもの(marketing-structural-issues.md Section 0.4)
  • 起動・実装する 偏重(本番反映の欠落): レビューレポートを読んで満足 ── 本番反映がなければ何も変わらない
  • 計測の取りこぼし: 本番反映を急ぎ、UTM / 計測タグ / ベースライン記録を省略 ── 学ぶ段で比較対象を失う
  • 学ぶの断絶: 本番反映した施策の結果を memory に書き戻さない ── 次サイクルが毎回ゼロから始まる
  • 観測・データ収集汚染: 検証されていない仮説を事実として memory/profile/ に書く ── 以降全ての出力が歪む
  • 「AI が言ったから」病: AI の出力を判断の根拠にする ── 責任の所在が組織から蒸発する(詳細 responsibility-design.md

Practitioner's Checklist

新しい施策に着手する前に以下を確認:

  • 観測・データ収集: 4 つの観測対象(Team / Customer / Market / Performance)が最新か? [TODO] が残っていないか? チーム内に未共有の情報がないか? 顧客の生の声が直近で記録されているか?
  • 理解・分析する: どの視点・何を判断基準に・どの形式で出させるか、スラッシュコマンドを明示しているか?
  • 再構築: 既成の KPI・聖域・前提を一度再構築したか? Customer Sync 実態と ICP 仮説のズレを篩にかけたか? ゼロベースで考えたか?
  • 起動・実装する: オーナー / 範囲 / 予算 / リスク / 計測 / 承認 / ロールバックが埋まり、本番反映前に activation-brief.mdmeasurement-plan.md が作られているか?
  • 学ぶ: 結果を次サイクルの観測・データ収集にどう還流するか決まっているか? Customer Sync への書き戻しがあるか?

このチェックが通らないうちは、AI に投げても成果は出ない。ただし マーケティングサイクルは文脈(規模・成熟度・速度・リスク)に応じて縮約・拡張するもので、一律のフル運用を強制するものではない。テーラリングの規定は次節「Tailoring」を参照。

Tailoring — マーケティングサイクルの縮約・拡張パス

原則: マーケティングサイクルは省略不可な 中核条件 と、文脈に応じて軽量化・拡張する 調整可能項目 の二層に分かれる。テーラリングは「省略の正当化を残すこと」が条件。「やらなかった」と「意図して外した」は別物として扱う。

中核条件(文脈に関わらず省略不可)

これを欠くと マーケティングサイクルが機能しない要素:

  • Customer Sync の独立保持 — 規模に関係なく ICP 仮説と顧客実態をそれぞれ別の記録として残す。1 人事業でも customer-signal.md 1 ファイルは持つ
  • 再構築段の存在 — 1 行のメモでも良い。「何を、なぜ再構築したか」を残すこと自体が省略不可
  • 本番反映前チェックのオーナー / 計測 / ロールバックの 3 項目 — 個人事業でも「自分がオーナー」「事前数値と判定期間」「止めるトリガ」は決める
  • 学ぶ段の書き戻し — 検証済みかどうかの判定だけは残す。書き戻し先が results/ 1 ファイルでも可
  • AI 出力の採否ログ — 「AI が言ったから」病の予防。これは規模と無関係

これら中核条件を文脈を理由に削るのは、テーラリングではなく中核条件の違反として扱う。

調整可能項目(規模・成熟度・速度・リスクで調整)

要素 簡易運用(1 人事業 / スタートアップ初期) 標準運用(小〜中チーム) 厳格運用(規制業種 / 複数事業部)
観測・データ収集の 4 つの観測対象 Team Sync は自分自身のみで可。Customer / Performance は必須 4 つの観測対象すべて 4 つの観測対象 + 部門別並走
CMO Marketing OS Playbook 12 知識エリアのカバレッジ点検 該当領域のみ点検 全領域を四半期に 1 回点検 領域別 owner、月次点検
理解・分析する 4 視点 1〜2 視点で十分(多くは ceo + customer) 案件に応じて切替 4 視点 + 外部 advisory
/brand スキップ可(個人ブランド一致) 案件単位 リリース毎、法務同席
本番反映前チェック 7 項目 省略不可の 3 項目(オーナー / 計測 / ロールバック) 7 項目 7 項目 + 承認ログ + 法務 / 計測監査
起動・実装する段の実行管理成果物 必要なものだけ 複数人・複数日・外部依存があれば作成 実行計画 / ステークホルダーマップ / リスク登録簿 / 変更履歴 / リソース計画を原則作成
再構築段の頻度 四半期 月次 週次(複数事業部の portfolio 含む)
/learn の書き戻し先 results/ のみ results/ + profile/ results/ + profile/ + organization/ + knowledge/marketing/tool/ knowledge/marketing/case/
AI 採否ログ粒度 1 行サマリ 採用 / 不採用 / 理由 採用 / 不採用 / 理由 / 代替案 / 法務確認

テーラリング判断軸

  1. 規模: 1 人 / 小チーム(〜10)/ 事業部(〜100)/ 複数事業部
  2. 成熟度: workspace 立ち上げ初週 / PMF 前 / 安定運用 / 改善フェーズ / 再構築
  3. 速度: 週単位の本番反映 / 月単位 / 四半期単位
  4. リスク: 個人ブログ / B2C SMB / B2B エンタープライズ / 規制業種(金融・医療・公共)

リスクが高いほど本番反映前チェックと承認を厚く、速度が速いほど 観測・データ収集の周期を短くする。規模が大きくなるほど 再構築を上位(ポートフォリオ)にも引き上げる。

シナリオ別の入口

シナリオ 推奨パス 重点
個人事業 / 1 人 workspace 簡易運用 /listen customer本番反映前チェックの省略不可 3 項目 → /learn を週次で
スタートアップ初期(PMF 前) 簡易運用 → 標準運用へ移行 Customer Sync 最重視。再構築は週次、起動・実装するは当週中の本番反映を前提
既存事業の改善サイクル 標準運用 /listen team-org /listen team-workspace から開始。再構築で引き継ぎ KPI を篩
規制業種 / 大企業 厳格運用 本番反映前チェック 7 項目 + 承認ログの徹底、organization/ 層をポートフォリオ再構築の場として併走
エージェンシー / 複数クライアント 標準運用 / クライアント = workspace organization/ にエージェンシー共通知、各 workspace に固有 ICP / Brand

アンチパターン

  • テーラリング名目の中核条件省略: 「うちは小さいから」で Customer Sync を削る → ICP と実態のズレ検出が効かず、マーケティングサイクルの構造的優位が消える
  • 省略の不文律化: 何を外したかを記録しない → 次サイクルで「なぜ本番反映前チェックの 4 項目しか見ていないのか」が再現できない
  • 簡易運用のまま固定化: 規模が拡大してもテーラリングを更新しない → 後から責任所在不明になる
  • 厳格運用の過剰適用: 1 人事業に承認ログと法務監査を要求 → サイクルが止まり、結局回らないので「マーケティングサイクルは重い」と誤解される
  • テーラリングを「妥協」と読む: テーラリングは妥協ではなく設計判断。判断したことを記録すれば妥協ではなくなる

テーラリングの記録

各 workspace の memory/workspaces/<slug>/profile/tailoring.md(任意)に以下を残す:

  • 採用パス(簡易運用 / 標準運用 / 厳格運用 / 部分カスタム)
  • 省略・縮約した調整可能項目と理由(文脈のどの軸に依拠したか)
  • 拡張した要素と理由
  • 次回見直し時期(規模変化・成熟度変化のトリガ)

これがないテーラリングは「忘れた」と区別がつかない。記録の有無自体が中核条件(責任設計)の一部である。

Canonical Flow

初回プロジェクトの推奨順:

  1. /workspace new <slug> — workspace を 1 つ作成(実在する事業名で)
  2. /listen team-org — 組織情報(観測・データ収集 / Team Sync)
  3. /listen team-brand — ブランドガイドライン(観測・データ収集 / Team Sync)
  4. /listen team-workspace — workspace 固有情報(観測・データ収集 / Team + Customer Sync
  5. /next — 次の一歩確認(詳細は /next --verbose)。不足があれば 1〜3 に戻る
  6. /insight ceo(理解・分析する 単体)or 横断ワークフロー(観測・データ収集〜学ぶ、未実装)
  7. /release or /insight consultant再構築。既成枠の再構築
  8. 実行(広告運用・コンテンツ・CVR 改善・分析等)は knowledge/base/ プレイブックを参照しながらインライン対話で進め、本番反映する(起動・実装する
  9. /listen market + /learn — 観測・データ収集 層への還流(学ぶ → 次サイクルへ)

関連ドキュメント

  • knowledge/marketing/playbook/foundations/structural-issues.md — マーケティングサイクルが解こうとしているマーケの構造的病理
  • knowledge/marketing/framework/signature-frameworks.md — 他のマーケティング体系(AARRR / STP / ZMOT 等)との並置
  • knowledge/marketing/playbook/knowledge-areas/org-capability/learning-organization.md — 学習プロセスをチームに埋め込む方法
  • knowledge/marketing/playbook/knowledge-areas/org-capability/responsibility-design.md — 責任の所在の設計、AI 委譲時代の責任外部化問題
  • knowledge/marketing/playbook/knowledge-areas/product-marketing-jtbd/customer-research-jtbd.mdCustomer Sync の実装プレイブック